遺言内容の実現
1.遺言書の内容の実現
遺言に書かれた内容は、自動的にそれが実現されるわけではなく誰かが現実に行動することで初めて実現することができます。
たとえば、不動産については証券移転登記の手続がひつようですし、預貯金については銀行等でその払い戻しを受けるか名義変更の手続きが必要です。
このように遺言の内容を実現することを遺言の執行といいます。
(1)不動産の場合
不動産について遺言がある場合、その内容を実現するためには、所有権移 転登記手続が必要です。
遺言で特定の不動産をある相続人に「相続させる」と記載されている場合 には、当該相続人は単独で所有権移転登記手続をすることができます。
これに対し、特定の不動産をある人に「遺贈する」と記載されている場合 は、その人は単独で所有権移転登記手続をすることはできず、その人と相 続人全員が共同して手続を行う必要があります。
(2)預貯金の払い戻し又は名義変更の場合
預貯金について遺言がある場合、その内容を実現するためには、預貯金を 解約して払い戻しを受けるか、想像人または受遺者の名義に変更する手 続が必要となります。
この場合、各金融機関によって手続は異なりますが、後々相続人間の紛争 に巻き込まれないために、相続人全員の署名押印を要求されることが多 いようです。
2.遺言執行者
遺言の執行は、相続人自身でおこなうことができます。しかし、相続人全員が共同して手続きするよう求められることが少なくありません。相続人がたくさんいればそれだけ手間がかかりますし、遺言の内容に不満のある相続人が手続に協力してくれないこともあります。
遺言の執行に困難が予想される場合には、確実に遺言の執行が行われるように遺言執行者を遺言書の中で指定しておくと便利です。
不動産や預貯金の遺贈の場合でも、遺言執行者が指定されていれば受遺者と遺言執行者だけで手続が可能になります。